たったひとつの恋をください
「まあめんどくさいだろうけど、二週間の補習と再追試でたぶん終わるだろうから。頑張れよっ!」
バシッと肩を叩かれて、よろけそうになるほどショックだった。
「お、おい。大丈夫か?」
「……はい」
ふらふらと職員室を出るとそこに、琴里がいた。
今、会いたくない人、ナンバー2だ。
とっさに逃げようとするけど、「あっ、おはよー」とがっちり捕まってしまう。
「ナナちゃんもテスト取りに来たの?どうだった?あたし全然自信なくてー」
自信がないと言うわりにはお気楽そうな琴里の話を、私は絶望的な気分で聞いていた。
どうしてこうなるんだろう。
なにもかも、なんだか全部、うまくいかない。
あいつのせいだ、と思った。
風邪引いたのも、集中できなかったのも、夏が暑いのも。
全部、あいつのせいに違いない。