たったひとつの恋をください
次の日から、さっそく補習が始まった。
「ナナちゃん!」
下駄箱で靴を履き替えていると、琴里が駆け寄って来た。
「あ、羽川さん。おはよう」
「もー。羽川さんじゃなくて、琴里でいいってば」
「あ、うん……」
やけに馴れ馴れしく接してくる琴里に、私はやっぱり苦笑いを浮かべることしかできないでいる。
たぶんいい子なんだろうなってのは、なんとなくわかるんだけど。
でも、あの蓮の彼女って知ってしまったから、つい距離を置いてしまう。
「補習嫌だよねえ。ナナちゃんも一緒だったからよかったけどー」
「あはは……」
……私としては、全然よくないんだけど。