たったひとつの恋をください




やっぱりいい子だな、って思った。


可愛くて、素直で、まっすぐで。


私にないものを、両手いっぱいに持ってる女の子。


こんないい子が、なんであんな奴と付き合ってるんだろう。


それだけが不思議だった。


確かに顔も運動神経もいいかもしれないけど。


……知らないのかな。


ふと思った。彼氏が見ず知らずの女にいきなり手を出すような、最低な男ってこと。


知らないから、大好きでいられるのかな。


それって、幸せって言えるんだろうか。


きっと何も知らないんだろう彼女の後ろ姿に、ふいに罪悪感を覚える。


私は何もしてないのに。悪いのは全部あいつなのに。


戻ってきた琴里がにこっと笑いながら小さくピースサインをつくるから、私もつられて、ほんの少し笑ってみる。


……やめよう。そう思った。


こんなこと考えたってどうにもならないんだし。


そもそも二人の関係なんて、私が気にすることじゃないんだから。



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