たったひとつの恋をください
「そんなの……わざわざ追いかけて来なくても、あの子に渡してくれればよかったのに」
「んなこと言うなって。これ、イニシャル入ってるしプレゼントだろ?大事に持っとけよ」
それでも強引に、ぽん、とハンカチを握らされた。
「わざわざどうも。でも、もう構わないで。あんたと話すことなんて一つもないんだから」
バッとその手を振り払って、思いっきり睨みつけてみるけれど。
「俺はあるよ」
蓮は構わず、私の目をまっすぐに見つめたままそう言った。
あのときと同じ、まっすぐな瞳。人の心に土足で踏み込んでくるような。
私はとっさに目を逸らした。
「そんなの、知らないよ。明日はもう行かないから」
それだけ言って、さっさと帰ろうとしたのに。