たったひとつの恋をください




「ーーごめん」



蓮がいきなりガバッと頭を下げて言うから、びっくりして足を止めてしまった。


「……え?」


「本当は、忘れ物なんて口実なんだ。あのときのことちゃんと謝りたくて、追いかけてきた。この前は、ふざけたりしてごめん。軽はずみで無責任なことして、ごめん」


その態度があまりにこの前と違っていたから、驚いて、何か言い返すことすら忘れていた。


でも少しして冷静になってみると、やっぱり煮え切らない思いがムクムクと湧き上がってくる。


ーーなにそれ。


なんで今さらそんなこと言うの?


わざわざ追いかけてきてまで、なんで真剣に謝ったりするの?


今さらそんな風に謝られたって、ちっともすっきりしないし、どうしたらいいかわかんなくなるよ。



「……バカじゃないの」



ぼそりと、私は俯いたままつぶやいた。


「え?」


「……なんでもない。じゃあね」


ふいと背を向けて、早足で帰り道を歩いた。


ーー本当、バカだ。


私、すごく怒ってたのに。


謝ったって絶対許してやらないつもりだったのに。


なのにそんな一言だけで、簡単に片付けてしまうなんて。


本当にバカなのは、きっとーー、私のほうだ。




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