たったひとつの恋をください




時計を見れば、すでに待ち合わせ時間から四十分経過。


……もう、ほんとに帰っちゃおうかな。


校門の柱に背中を預けて、足をぶらぶら揺らしながら思った。


バスケなんて、そもそも興味ないんだし。それにこれだけたくさんいるなら、琴里だって他に友達いるだろうし。


帰り道に向かって足を踏み出すけれど、でもやっぱり勝手に帰るのは気が引けて、思いとどまってしまう。


結局、私は炎天下でひたすらバカみたいに、待ちぼうけをくらっていた。


いよいよ頭がクラクラしてきたところで、ようやく視界の先に琴里の姿が見えた。


「ごめんっ、ナナちゃん!」


走ってきたらしい琴里は、ぜえぜえ息を切らしながら言う。


普段なら少しくらいの暑さじゃ滅多に汗をかかない琴里が、今は首筋や腕にまで汗を浮かべている。


それくらい必死に走ってきたんだっていうのは伝わるけれど。でも、遅刻は遅刻だ。



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