たったひとつの恋をください
するとーー、
「んん~……っ」と、下から間延びした声。
「……………………え?」
「……あれ。七瀬だ」
ぼんやり目を開いた蓮が、目を擦りながら私を見る。
「へ?」
「あー、変なとこで寝てたせいで体がいてー……」
ね、寝てた!?
「えっ、寝てたの?ここで?」
「うん。木陰で気持ちよかったから」
蓮はあっさりと答えて、体を起こしながら背中についた砂を手で払う。
……嘘でしょ?
私は呆れて、がくりと肩を落とした。
「気持ちよかったって……せめてベンチに行こうとか思わなかったの?」
「ああ……もうね、全力で走りすぎて、急に体力切れたから。バタッと倒れて、いつの間にか爆睡してた」
ケラケラと他人事みたいに笑うけど。
私は、ちっとも笑えなかった。
……な、なんて紛らわしい奴。
こんな土の上で人が倒れてたら、誰だって勘違いするよ。本気で心配して損した。
でもーー、
「よかった……」
思わず、口にしていた。
よかった、ケガとかじゃなくて。
一瞬、蓮がバスケできなくなったらどうしよう、とか、本気で考えてしまった。
もうあの姿が見れなくなるのは嫌だって。