たったひとつの恋をください
「もしかして、心配してくれた?」
「えっ、違……っ」
「ありがとな」
ポンポン、と頭を撫でられて。
「ーーーーっ」
落ち着いていた熱が、再び上がり始める。
「ちょっと……砂ついた手で触らないでよ!」
「あ、ごめん」
ていうか、彼女いるくせに軽々しくこういうことしないでよ。
真っ赤になっているだろう顔を隠すために、パッと下を向いた。それでようやく、大事なことを思い出す。
「……ああっ、私のアイス!」
楽しみにしていたアイスが、ドロドロに溶けて見るも無残な姿に。しかもアリさんのエサになって、ちょっと気持ち悪いことになってるし。
うう、まだちょっとしか食べてなかったのに……。
もう泣きたい。ていうかちょっと涙出た。
「えーと……もしかして、俺のせい?」
蓮がちょっと気まずそうに、自分を指差す。
「うん。そうだね」
ムカつくから、即答してやった。
「すいません、ジュース奢らせてもらいます」
「じゃ、コーラで」
私たちはベンチに並んで座って、自販機で買ったコーラを飲んだ。
「ああ、うめーっ」
相当喉が渇いていたのだろう。一気に半分くらい飲み干した蓮が、ぷはっと息をつく。
うん、おいしい。疲れも、焦りも、ついでにアイスがなくなったショックも、色々吹き飛ぶ爽快感。