たったひとつの恋をください
「そういえば、なんでそんな倒れるまで全力で走ってたの?」
ふと、気になったことを尋ねてみる。
試合が終わったばっかりで、疲れてるはずなのに。
どうしてそんな、わざわざ体にムチ打つようなことを。
「……だって、負けたから。悔しくて、じっとしてられなくて」
蓮は少し顔を伏せてつぶやいた。
いつもとは違う、沈んだ声。
ーーそう、結果は、負けだった。
ギリギリだった。あとほんの少し時間があれば、もしかしたら勝てたかもしれなかった。
「でも……惜しかったよ。すごく」
私は思ったことを言った。私に言えることなんて、それくらいしかなかったから。
だって、本当に私まで悔しくて思わず貰い泣きしそうになるくらい、ギリギリだったんだ。
最後のほうなんてもう、体育館全体が異様な盛り上がりで。
一点が勝敗を決めるっていうプレッシャーの中で、蓮は、最後の最後まで諦めずに頑張ってた。
それで充分じゃないの?
「まあ、でも、スポーツは結果が全てだから。負けは負け。完全にこっちの実力不足だよ」
「そんな……」
「で、悔しいからひたすら走ってた。走ってる間は全部忘れられるからさ」
「…………」
負けちゃったなって、蓮は笑ってたけど。本当はやっぱり、悔しかったんだ。
そんなの、当たり前だよね。
だって、あんなに毎日毎日一人でだって練習してたんだから。
もし、あのシュートが決まってたら、ケガで休んでなかったら、あともう少し頑張れてたら……。
バスケをよく知らない私だって、そう思うんだ。
蓮は、その何倍も何十倍も悔しいに決まってるのに。