たったひとつの恋をください




「……すごいね、蓮は」


思わず、口に出していた。


「別にすごくないだろ。負けたんだし」


「ううん、すごいよ」


誰よりも悔しいはずなのに、そんな風にあっさり負けを認めてしまえるのは、きっと強いから。頑張った自分に自信を持ってるから。


私は、そんな風に堂々としていられなかった


いつだって言い訳ばかりしてた。


都合が悪くなれば何でも、成績のことだって、昔からそうだった。


私は頭がいいわけじゃないし、要領だってそんなによくないのは、ずっと前から知っていた。


学年が上がるたび、だんだんいい点を取れなくなっていって。でも他の遊んでる子たちに負けるのが悔しくて、あれこれ理由をつけて、自分を無理やり納得させていた。


ーー本気でやったわけじゃない。


ーー今回はたまたま調子が悪かったんだ。


そんな風に言い訳してたら、いつの間にか、本気で頑張るのがバカらしくなっていた。


だけど。君は、違うんだね。


いつだって逃げてばかりの私とは、正反対で。前だけを向いて、負けたって立ち止まらずに、もう次に向かって進んでる。


それは、私にはないものだから。だからやっぱり眩しくて、すごいなって思ったんだ。




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