たったひとつの恋をください
「そろそろ、帰るか」
蓮が空になったペットボトルを手に立ち上がって、
「そっ、そうだね」
私も慌ててそれに続く。
夕陽の先っぽが、いつの間にか町の向こうに隠れていた。もうすぐ日が暮れる。
あと少しすれば蝉の声も止んで、辺りは真っ暗になってしまう。
ぼんやりと景色を眺めながら、ようやく本来の目的を思い出した。
買い物袋は、無造作に自転車のカゴに積んだままだ。
遅いって怒られるだろうな。
早く帰らなきゃいけないのにーー
もう少しここにいたい、なんて名残り惜しく思ってしまうのは、
きっと、ダメなことなんだろうな。