たったひとつの恋をください
黙ったままの琴里が気になって、チラリと目を向けてみると。
「そうだっ!」
琴里は大きな目をキラキラと輝かせていた。
まるで、すごくいいことでも閃いたみたいに。
「お祭り!お祭り行こうよっ!」
ガシッと手を掴まれた。
「お、お祭り……?」
「うん。八月の終わりにあるの。ねっ、蓮と太一くんも誘って、四人で行かない?」
やっぱり、その四人なんだ。
もはやセットみたいになってるし……。
「それは二人で行ってきなよ。太一と私はそういう感じじゃないし」
私はきっぱり断った。Wデートみたいになるのが嫌だったし、それに太一だって、一緒に行く女の子くらいいるだろうし。
「えー。そうかなあ?太一くん、結構ナナちゃんのこと気に入ってると思うけど?」
なのに、またそんな突拍子もないことを言い出すから、面食らってしまう。
「それはないよ。絶対」
「でもこの前太一くん、ナナちゃんのこと面白いって言ってたよ?」
「面白いって……」
予想通りの答えに、がくりと肩を落とす。
やっぱり可愛いとかじゃなくて、面白いなんだ。それって単に、周りにいないタイプで珍しいってだけだと思うけどな。