たったひとつの恋をください




「何か予定ある?」


「う……ないけど」


残念なことに八月末の予定なんて、宿題を片付けるくらいしか思いつかない。


押しに弱い私は、結局渋々頷いてしまうことになる。


「じゃあ、決まりだねっ!」


蓮にも伝えとくねー、と琴里は上機嫌に言って、早速カチカチとメールを打ちはじめている。


はあ、とため息をつくけれど。琴里の強引さに前ほど抵抗がなくなっているのは、とっくに気づいていた。


補習が終われば、あとは家でごろごろするだけだったはずの夏休みだけれどーー。


たまには夏らしいことをしてみるのも、悪くないかもしれない。


そんな風に思うようになるなんて、少し前の私なら、絶対に考えられないことだったから。



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