たったひとつの恋をください
「あれ、じつは結構傷ついたんだよ。あたしたちって友達じゃないのかなって」
淋しそうにそう言う琴里に、ズキンと胸が痛んだ。
だから、あのとき泣きそうな顔してたの?
そんなことでーー?
「ケータイなんてどうでもよかったの。ただあたしは、ナナちゃんと一緒にご飯食べたり、お喋りしたり、すごく楽しかったから。ナナちゃんは違うのかなって思ったら、なんか悲しくなっちゃって」
そんなことを言われたのは、初めてだった。
今まで、転校生ってだけで最初は注目されて人が寄ってくるけど、そんなのは一瞬だけで。
しばらくすれば、私の周りには誰もいなくなっていた。
私がつまんない奴だから。
私といたって面白くないから。
自分でだってそう思うから、琴里だって同じだと思ってた。
なのに、一緒にいて楽しいとか、離れて淋しいとか、そんな風に言葉にして言われたのは初めてで。
私に対してそんなこと思う人がいるなんて、思いもしなかった。