不器用男子に溺愛されて

「みや子ちゃんがそう言うなら……でも、でもね。それにしてもよ。おかしくない? 絶対に彼女に対して言う言葉じゃないと思うわ。みや子ちゃんが悩んでるっていうのに、向いてないとか辞めろとか……何様なのよ!ああ、もう。ダメ、私、どうしたってイライラしちゃうんですけど!」

 加奈代さんが両手で頭を抱え出した。そんな加奈代さんに続き、咲ちゃんも「私もイライラしてます。堀川さん潰したい」と小さく呟いた。

「加奈代さん、落ち着いてください。咲ちゃんは、理久くんのこと絶対に潰さないでね⁉︎」

 ものすごくイライラし始めてしまい、眉間にずっとシワが寄っている二人。私は、そんな二人を宥めつつお弁当を食べ続けていた。

 すると、そんな時。

「小畑」

「あ、佐伯さん」

 背後から声がかかり、三人一斉にその声がした方を向くと、そこには佐伯さんが立っていた。

「なんか、休憩中にすまんな。小畑、休憩終わったらすぐに俺のとこ来るように」

「あ、はい」

 佐伯さんは一言だけ言い残してすぐに去って行ってしまった。私達はそんな佐伯さんの背中を見送った後、顔を見合わせた。

「みや子ちゃんを呼び出しって、何だろうね」

「佐伯さんって、オシャレで格好いいよね。私、結構好き」

 何故か二人ともそれぞれ違う内容を話している。そんな二人の側で、私は佐伯さんからの呼び出しの理由はこれだろうなと何となく分かってしまった。

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