不器用男子に溺愛されて
「あの人、本当にどうにかならないの」
「え、あ、うん……でもね、咲ちゃん。理久くん、本当はすごく良い人なんだよ」
「それは何度も聞いたけど、その〝良い人〟の部分が全く出てこないじゃない。あれじゃあ、ただの性悪社員って言われるわよ」
咲ちゃんが呆れたようにそう言った。
理久くんは、一部派遣女子の間で〝性悪社員〟と呼ばれてしまっている。その原因は、理久くんの冷たい性格にあった。厳しいというか、少しだけトゲのある言い方をしてしまう理久くんは、少しだけ他の女子に嫌われてしまっている。だけど、本当はそんな事はない。私はそれを知っているのだ。
「あ、来た来た」
咲ちゃんのその声を聞き、咲ちゃんが見る方へ視線を向けると、さっきまで理久くんと喧嘩をしていた加奈代さんがこちらへ向かって来ていた。
「あはは、本当だ」
加奈代さんは、理久くんと同い年で同期だし、思っていることをはっきり言う性格の為、よく理久くんと言い合いをしている。言い合いをした後は、大体私の方へやって来る。そして。
「みや子ちゃん!どうして、あんな性悪男と付き合ってるの⁉︎」
と、言うのである。
「どうしてって言われても……」
「どうしてみや子ちゃんみたいな良い子があんな奴と……私はね、今でも信じられないのよ。あんな性悪男に彼女がいるって知った時の衝撃。それから、その彼女っていうのがみや子ちゃんだったっていう更なる衝撃をね」