不器用男子に溺愛されて

「多分、私、また何かミスしたんだと思います……」

 ずん、と肩に大きな荷物がのしかかってくるような重さを感じた。ああ、また怒られてしまうのか。と、私は直感的に予感した。

「まだ分からないじゃない。もしそうだとしても、それはみや子ちゃんのせいじゃないわ。あの性悪野郎がみや子ちゃんの話をまともに聞かないせいよ。本当、アイツ、図に乗って……」

「そうですね。もしミスが原因の呼び出しだとしても、佐伯さんの呼び出しなら本望よ。大人の佐伯さんと楽しんできなさい」

 ああ、29歳って素敵。と、目を輝かせた咲ちゃんは一体何を考えているのだろうか。

 確かに、佐伯さんは黒髪をオールバックにしていて、シャープなスタイルからスーツを格好良く着こなしている。鼻の下と顎に生えた髭もワイルドで、性格も優しくて仕事もできるし、ここの女性社員から人気が高い。だけど。

「絶対、理久くんの方が格好いいもん」

 私の目には、理久くんが一番に映る。理久くん以上の人なんていない。

「本当、こんな風に想ってくれる子、絶対他にいないわよ。それなのにアイツはもう……」

 溜息混じりに加奈代さんがそう呟いた。そんな加奈代さんや咲ちゃんが私の事をここまで想ってくれていることが私は嬉しかった。

 いつも理久くんのことを性悪だと言う二人だけれど、本気で言っているわけじゃないことくらいは分かっている。理久くんだって、本当はすごく優しいんだ。昨日の事だって、ただ、私や会社のことを考えて言ってくれただけだよね。きっと。

 私、そう、信じてもいいよね?


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