不器用男子に溺愛されて
「……はい。ありがとうございます」
私がそう言うと「よし、それじゃあそろそろ戻るか」と言って私に背を向けた。
〝同じ職場にいる彼氏もいるわけだし〟と言った佐伯さん。それは、紛れもなく理久くんのことを指している。理久くんに仕事の相談をしてみろということだが、私は昨日既に理久くんに仕事の相談のようなものをした。しかし、相談をしたが故にこうして悩みが増えてしまっているのだ。
「あの、佐伯さん」
「ん? どうした」
理久くんは、悪くない。理久くんが言ったことはきっと私やこの会社のため。それは分かっているけれど、それでも胸の奥のモヤモヤは取れない。
少しでもこのモヤモヤを取りたい。取るための方法を知りたい。そう思った私は、異性である佐伯さんにヒントをもらおうと考えた。
「あの……やっぱり、少しだけ話聞いてもらってもいいですか」
笑顔で頷いてくれた佐伯さんに、私は少しだけ安心して話を始めた。昨日の事を話し、それから、普段あまり恋人らしいことをしたことがないことも少し話した。
「男の人って、みんなそういうものなんですか?」
「いや、まさか。堀川は仕事ではストイックだけどプライベートは流石に大丈夫だろうと思ってたんだけど……そんなに冷たいのか」