不器用男子に溺愛されて
───数時間後。
私は、理久くんが仕事を終えるのを待ち、話があると伝えると理久くんの家へ呼ばれやって来た。
「話って?」
相変わらず、視線はミャーコに向けられたまま。視線の先にいるミャーコの首元を指先で優しく撫でながら、私にそう問いかけるんだ。
「あのね、昨日……理久くん、私に仕事辞めればって言ったよね。あれは……私とか会社の為を思って言ってくれたこと? それとも、単に私と同じ会社で働くのが嫌だから……?」
理久くんの方に視線を向ける。理久くんは、やっぱり視線を私の方に向けないまま「どうして?」と聞いた。
「そんなこと聞いてどうなるわけ。俺の意見は関係ない。正社員になるかどうかは小畑が決めることだって、俺言ったけど」
「そう、だけど……」
もう既に、私は泣きそうだった。だけど、そんな私の気持ちや感情に理久くんはきっと気づかない。
「知りたかったの。理久くんがそう言った理由。知りたいの……理久くんが、私の事を、本当はどう思ってるのか」
唇をぎゅっと噛んだ。
絶対に私の方へ向けられない視線が悔しくて、悲しくて、私の頬には大粒の涙が伝った。