不器用男子に溺愛されて
「え?」
佐伯さんが私に謝らなくちゃいけないことなんてあったかな、と私は考えた。考えても出てこなかったその答えは、佐伯さんの口から飛び出した。
「堀川と別れたって夏原に聞いたんだけど……俺が、思ってることを伝えたほうがいいとか言ったばかりに」
佐伯さんが、申し訳なさそうにして少し瞼を伏せた。
「そ、そんな!佐伯さんのせいじゃありません!むしろ、佐伯さんには感謝してるんです」
「感謝?」
「はい。私、今まで自分の思ってること何一つ堀川さんに言えてなかった気がするので。今回、結果はどうであれちゃんと伝えられて良かったなって思ってます。きっと、好きなのは私だけだったんだと思うので遅かれ早かれこうなってたと思いますし……佐伯さんは、一ミリも悪くないです」
ありがとうございます、と付け足して私は頭を下げた。下げた頭を再び上げると、佐伯さんは眉を八の字にして私を見ていた。
「私なら大丈夫です!堀川さんの普段の素っ気ない態度からメンタルは鍛えられてきたので!あ、それより、咲ちゃ……夏原さんとはよく話すんですか? 私が別れたことも夏原さんから聞いたんですよね」
これ以上佐伯さんに罪悪感を感じて欲しくもないし、私自身もまだこの話をする度に胸が痛くなった。だから、少しだけ会話を変える。