不器用男子に溺愛されて
「え? あ、ああ。小畑、夏原から何も聞いてない?」
「え?」
「俺、夏原に何度かご飯行かないかって誘われてて、ずっと断ってたんだけど昨日二人でご飯行った。まぁ、そのくらいの仲ではあるかな」
「えっ⁉︎」
佐伯さんの言葉に、ついつい私は大きな声を出してしまった。確かに、咲ちゃんは話をする度に佐伯さんがタイプだと何度か言っていたけれど、佐伯さんをご飯に誘ったことも、昨日ご飯へ行ったことも聞いていない。
「やっぱり聞いてなかったか。多分、夏原が昨日ご飯に行ったことを言わなかったのは、小畑のことを気遣ってだと思うから許してやってよ」
佐伯さんの言葉に、私は一度だけ頷いた。
佐伯さんの言うとおり、優しい咲ちゃんのことだから、きっと私がこんな状況なのに自分の話をするのはいけないと思ったのだろう。
きっと、いつも理久くんとうまくいっていなかった私に、咲ちゃんは自分の話を出来ずにいたんだ。そう思うと、私は申し訳ない気持ちになった。
「まあ、この話はどうなるか分からないし社内秘で。よろしく頼む」
「はい!分かりました」
「ありがとう。小畑、何かあったらなんでも話聞くからな。異性にしか分からないこともあるだろうし」
「はい、ありがとうございます」
ぺこりと頭をさげると、佐伯さんは笑顔を浮かべて頷いた後で私に背を向けた。そして先にオフィスの方向へと歩き出した。