不器用男子に溺愛されて
「みや子!みや子、みや子!」
「咲ちゃん、どうしたの?」
理久くんと別れてから一週間が経った頃。毎日泣かないよう必死で仕事場へとやって来て仕事をしている私に、咲ちゃんが声をかけてきた。
「明日、12時に駅前集合ね!」
「えっ? 明日? ど、どうして?」
「森田さんとのデートの日、明日になったから明日みや子も来てってこと!あ、ちなみに森田さんには内緒で」
よろしくね、と言って咲ちゃんが去っていった。舌を少しだけ出していた咲ちゃんの表情からして、咲ちゃんと二人でのデートだと思っている森田さんを騙す気なのだろう。
私は、そんな森田さんの期待を、私が行くことで壊してしまってもいいものかと何度も考えた。
……しかし、咲ちゃんに説得を重ねられ、翌日の土曜日。私はちゃっかり待ち合わせ場所にである駅前へとやって来てしまった。
「あ、みや子!おはよ」
「咲ちゃん、おはよう。森田さんはまだなんだね。私、本当に来て良かったのかな」
周りを見渡して、森田さんがまだ来ていないことを確認した。
「いいのよいいのよ。なんとかなるわ」
そう言って笑う咲ちゃんに少しも安心できなかった私は、これからこの集合場所へやって来てガッカリしてしまう森田さんを想像して切ない気持ちになった。