不器用男子に溺愛されて

 そんな、少しだけ哀れな森田さんは私と咲ちゃんが合流して間もなくやって来た。森田さんは私を見るなり目をくるりと丸くした。

「えっ!嘘、どうして小畑ちゃんがいるの⁉︎」

 いつものチャラそうな雰囲気とは少し違い、チェックのシャツに黒いパンツ、スニーカーというシンプルでありながらオシャレな格好で現れた森田さんは私と咲ちゃんを交互に見た。

「今日は堀川さんの話を聞くんだから、みや子がいるのは当たり前でしょ?」 

「え、いや、でも」

「私、別に〝二人で〟とは言ってないもーん。ほら、行くよ二人とも!」

 納得のいっていない森田さんを構わず先を歩き出した咲ちゃん。私は、森田さんと不意に目が合い「あの、何か、すみません」と頭を下げた。

「いいよいいよ、あの咲ちゃんが相手だからね。そんなに簡単にいくとは思ってなかったし、まぁ、咲ちゃんとプライベートで会えるだけでも進歩かな」

 今日はよろしくね、と言って森田さんが笑う。

 明るい髪色や普段のノリの良い話し方から少しだけチャラいイメージがあった森田さん。だけど、咲ちゃんのことは遊びでも何でもなく真剣に考えているんだなあと彼の目を見て思った。

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