不器用男子に溺愛されて
「私……私は、堀川さんと、またやり直したいです。別れたくなかった。このままで終わりたくない……です」
制服の上に羽織っているカーディガンの裾をぎゅっと握り締めた。
怖くて、理久くんの顔は見れない。私は俯いたままで理久くんの返事を待っていた。数秒返事を待っていると。
「無理。小畑とは、もう付き合わない」
そう、理久くんの言葉が降ってきた。
私は、唇をぎゅっと噛み締めた。ああ、もう戻れないんだ。もう、ダメなんだ私達。そういう、悲しくて、少しの期待が全て砕かれるような感情に見舞われていた。
ああ、どうしたらいいだろう。顔を上げたって今の私では上手く笑えないだろうし、理久くんの顔を見れば泣いてしまうかもしれない。
私が次にどんな行動を起こすべきかをひたすら考えていると、私の背後から大きく慌ただしい足音が聞こえてきた。
「おい、堀川!お前、何格好つけてんだ!今のは格好つけるとこじゃないだろ!馬鹿野郎!」
恐らく、声の主は森田さん。その証拠に「はっ? どうして、お前が」という理久くんの驚いた声が聞こえてくる。
「ちょっと!何勝手に出て行くのよ!隠れてようって言ってたじゃない!」
続いて聞こえてきたヒールの音と、少しだけ怒ったような声。これは、間違いなく咲ちゃんだ。