不器用男子に溺愛されて
「二人に……相談してて」
「それで」
「ほ、堀川さんにずっと話しかけたくて……だけど、一人だと勇気が出なくて、ずっとチャンス逃してて。そしたら、二人が協力してくれて」
「それで、ああなったと」
私は、返事の代わりに一度だけ頷いた。すると、理久くんは溜息を一つこぼすと髪をかき乱した。
「堀川、さん」
「……なに」
「格好つけてる……って、何に格好つけてるの?」
さっきの森田さんの言葉を思い出した。
〝お前も変な格好つけてないで、いい加減素直になれよ〟
森田さんが言った言葉のように、この理久くんに、まだ私に隠している顔、言葉、感情があるのだとしたら。
「素直になれよって……まだ、私に見せてない何かがあるってことだよね」
知りたい。
全部、全部、全部、知りたい。
「……教えて欲しい。知りたいの」
例えば、それが私の心に大きな傷を作ることだとしても、何だとしても。知りたい。好きな人の全てを知りたいと思うのは、きっと、恋が愛に移るまでに起こる、ごく当たり前の感情だ。
「.……別に。何もない」
小さく、素っ気なく、理久くんが私に目を合わさずにそう返した。