不器用男子に溺愛されて

 あぐらをかく理久くんの足元にすり寄るミャーコ。そんなミャーコを撫でる理久くんの指先が一瞬、ぎこちなく動いた。

「それじゃあ、ミャーコの名前の由来って何……?」

 私の質問に、次は理久くんの指先の動きが止まってしまった。

「別に、由来なんてないけど」

「でも、森田さんが言ってた。ミャーコの名前の由来は私の名前だって」

 私の言葉に、理久くんは「あいつ」と小さな声を漏らした。

 心底面倒くさそうで、不機嫌な顔をしているけれど、それでもミャーコの名前の由来について否定をしない理久くんに、私は少しだけ頬が緩んでしまった。


「……堀川さんと、やり直したい」


 私は、もう一度理久くんに伝えた。

 すると、理久くんは視線はミャーコに向けたままで口を開いた。

「どうして、俺なの」

 理久くんはそう言うと、ミャーコを撫でる手の動きを止めた。そして、ゆっくり私に視線を向けた。

 久しぶりに合ったような気がする視線に、私の胸の鼓動は高鳴るばかりだった。

 しかし、そんな胸の鼓動を抑え、視線を理久くんに向けたままで、私は大きく、はっきり口を開いた。


「……好き、だから。それ以外の理由なんてないもん。理久くんだから……理久くんしかいないから、こんなに必死なの」

< 51 / 94 >

この作品をシェア

pagetop