不器用男子に溺愛されて
あぐらをかく理久くんの足元にすり寄るミャーコ。そんなミャーコを撫でる理久くんの指先が一瞬、ぎこちなく動いた。
「それじゃあ、ミャーコの名前の由来って何……?」
私の質問に、次は理久くんの指先の動きが止まってしまった。
「別に、由来なんてないけど」
「でも、森田さんが言ってた。ミャーコの名前の由来は私の名前だって」
私の言葉に、理久くんは「あいつ」と小さな声を漏らした。
心底面倒くさそうで、不機嫌な顔をしているけれど、それでもミャーコの名前の由来について否定をしない理久くんに、私は少しだけ頬が緩んでしまった。
「……堀川さんと、やり直したい」
私は、もう一度理久くんに伝えた。
すると、理久くんは視線はミャーコに向けたままで口を開いた。
「どうして、俺なの」
理久くんはそう言うと、ミャーコを撫でる手の動きを止めた。そして、ゆっくり私に視線を向けた。
久しぶりに合ったような気がする視線に、私の胸の鼓動は高鳴るばかりだった。
しかし、そんな胸の鼓動を抑え、視線を理久くんに向けたままで、私は大きく、はっきり口を開いた。
「……好き、だから。それ以外の理由なんてないもん。理久くんだから……理久くんしかいないから、こんなに必死なの」