不器用男子に溺愛されて
佐伯さんの視線の先が気になり、振り返る。すると、そこにはいつも以上に不機嫌そうな表情を浮かべる理久くんがいた。
「お、堀川。どうした?」
明らかに不機嫌な表情をしている理久くんに向けて、軽いノリで声をかける佐伯さんは一体何を考えているのだろうか。
「どうした、じゃないんですけど」
「んー? 何怒ってんだよ」
「佐伯さん、ちょっと小畑に構いすぎじゃないですか。正直、気に食わないんですけど」
理久くんの言葉に、私は衝撃を受けた。ひょっとして、理久くんはヤキモチを妬いているのではないか。そう気づいた瞬間、ものすごい驚きと衝撃で、私の口は開いたまま塞がらなかった。
「あー、そっか。お前ら付き合ってるんだったな、そういえば。悪い悪い」
佐伯さんがへらへらと笑ってそう言う。その佐伯さんの一言も気に障ったのか、理久くんは眉間にしわを寄せる。
「小畑、ちょっと来い」
「あ、えっ……⁉︎」
突然私の左腕を掴んだ理久くん。すると、そのまま理久くんは強引に腕を引き歩き出してしまった。
私は、まるで理久くんに引きずられるかのように着いて行く。佐伯さんといた場所から少し離れたところにある給湯室。そこに入ると理久くんはやっと私の手を離した。