不器用男子に溺愛されて
episode * 05
────数日後。
「お先に失礼します」
定時の18時過ぎ。私は、業務を終えると一人オフィスを出た。
何だか最近、私は理久くんととても上手くいっている。今までの事がまるで嘘みたいに、よりを戻すことができてからの私達は順調だった。理久くんも前より優しい感じがするし、こんなにも幸せで良いのかと思う程に幸せだった。
「みや子」
「あ、咲ちゃん」
廊下を一人歩いていた私の背後から、肩に手を置いて私の名前を呼んだ声。振り向くと、そこには咲ちゃんがいた。
「途中まで一緒に帰ろ」
「うん!」
私は頷きそう答えると、咲ちゃんとふたり肩を並べて廊下を歩き続けた。
「みや子、堀川さんと最近良い感じだよね」
「えへへ。ありがとう」
「そう言えば、今日は堀川さんのとこ行かないんだね」
「うん。本当は今日行く予定だったんだけど、急にダメになったみたいで」
「そうなんだ。それは残念だね」
咲ちゃんの言葉に、私は小さく一度だけ頷いた。それから、私達は他愛もない話をしながら廊下を歩き、会社の出口までやってきた。
「でさ、今度……って、ちょっと、ねえ、みや子。あれって」
「えっ?」
大きなガラス張りのドア。その向こう側に視線を向けて立ち止まった咲ちゃん。反射的に私も立ち止まり、そんな咲ちゃんの視線の先へと目を向けると、そこには理久くんの後ろ姿があった。