不器用男子に溺愛されて
そこから、私は毎日のように猫を可愛がりに行く理久くんに声をかけた。そして、自分から告白もした。どうしたことか、絶対にふられると覚悟を決めていたはずの告白は、引き受けられてしまったのである。だから私は、こうして理久くんと恋人としてお付き合いをしているのだけれど……。
「理久くん、理久くん」
「なに」
「今の話、聞いてた?」
「あー、ごめん。聞いてなかった」
仕事終わりに寄った理久くんの住むマンションの一室にて。理久くんは、私のことをそっちのけで、付き合い始めた頃に飼い始めたあの白猫を相変わらずの優しい表情で可愛がっていた。
「ううん。何でもない話だったから全然いいよ。それより、理久くんは本当にミャーコが好きだよね。ミャーコ、良かったね。理久くんに見つけてもらえて。理久くん、毎日欠かさず見に行ってたもんね」
彼が白猫につけた名前は、ミャーコ。どうしてその名前なのかは知らないけれど、きっと、動物に名前をつけるのが苦手そうな理久くんのことだから、猫にありがちなミャーコという名前を付けたのだろうと思う。
「小畑も、毎日のように俺のこと観察しに来てたな」
「あはは、それは……ごめんなさい」
えへへ、と笑った。
ミャーコの頭を撫でながら口角を上げている理久くんの視線は、なかなか私と合わない。彼が視線を向けているのは、いつもミャーコだ。