不器用男子に溺愛されて

「まだ気にしてるんだ」

「あ、うーん、気にしてる……かなあ。もう綺麗な人になろうとか無謀なことはしてないけど、ダイエットくらいはした方がいいかなって思って」

「どうして?」

 上半身を起こし、動きを止めた。そして、視線を足の爪先へと向けたままで口を開く。

「だって……他の子と比べると太いし、細い子の方がいいと思うし、それに、理久くんに釣り合うようになりたいって思うから」

 小さく呟いた私の言葉に、理久くんは「はあ」と溜息をついた。

「小畑は何も分かってないな」

 なあ、ミャーコ? そう言った理久くんは足元のミャーコをわしゃわしゃと撫でるとそのまま口を開いた。

「スリムな方がいいなんて誰の意見だよ。別に俺は小畑のこと太ってると思ったことは一度もないし、それに、一般的にそうなるんだとしても、ちょっと丸いくらいの方が愛嬌あっていいと思うけど。な、ミャーコ」

 みゃおん、とミャーコが小さく鳴いた。

「ほら、ミャーコもそう言ってる」

 理久くんはそう言って笑うと、ミャーコに落としていた視線を私の方へと上げた。

 突然合った視線に、どくんと高鳴る心臓。理久くんは何を言い出すのかと思うと「小畑は小畑のままでいい」と真っ直ぐ私を見て言った。

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