不器用男子に溺愛されて

 驚きのあまり、声が出なかった。

 今、私の聞き間違いでなければ、理久くんの口からはプロポーズの言葉が発せられた。だけど、あまりに突然すぎて、夢にも思わなかった言葉に、私の脳はまだ理解しきれていない。

 だけど、そのはずなのに、瞼からは暖かい雫がぼとぼとと零れ落ちていく。


「なんで泣くの」

「えっ……だ、だって……」

「だって?」

「理久くんがっ……結婚しようって……言った、から」


 嬉しくて、と声にならないような声で伝える。すると、理久くんは優しく笑ってミャーコをフローリングの上へとおろした。


「俺は、前にも一度言ったつもりだけど」

「え?」

「会社を辞めればって言った時。あの時、仕事を辞めて俺と結婚すればいいだろって意図で言ったんだけど」

「そ、そんなの分かんないよ!もう!」

 理久くんの言葉に、私はまた更に驚いた。まさか、理久くんがあの時から結婚のことを考えてくれていたなんて、私はちっとも知らなかった。

 分かりにくい理久くんにも問題はあるけれど、それでも、その時に気づきたかった。


「で、するの? 結婚」

 答えなんて、聞かなくても分かっているはず。それなのに、余裕そうな笑みを浮かべてそう聞いてくる理久くん。

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