恋して愛して


甘い香りがして、よだれが出そうな感じだった。


一口食べると、甘さがさらに広がって匂いもよくて。


「美味そうに食うやつって、見てて飽きない」

恭介君が温かいコーヒーを飲んでつぶやく。

わぁ、大人。その一言が精一杯。

「あ、一口食べる?」

そう口走ったあとに、しまった。そう思ったけど遅かった。

恭介君は私のフォークを使って、シフォンケーキを食べた。

あぁ、間接キス。

何回同じ事をすれば気が済むんだろう。(前は大翔君)


「うま」

私が何考えてるかも知らずに、味の評価を「うま」だけで片付けられた。

まぁ、そんな所が恭介君なんだよね。


気にしててもしょうがない。

私は黙々とケーキを食べる。


「俺、親に捨てられたんだ」

とっさに言われたその言葉に、私は動きが止まった。

「俺から、話したかったけど。だいたいのことは愛海に聞いたんだよな?」

「う、うん。」

「ま、いい。とりあえず聞いて欲しい」

あのとき聞いてしまった自分に、罪悪感が今さら出てきた。

罪悪感を抱きながら、恭介君の話を聞いた。
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