恋して愛して
《中武優衣さんのご家族の方ですか?》
「そうです」
本当は違うけど、違うって言ってじゃあ教えられませんなんて言われたら、溜まったもんじゃない。
《第一病院です。中武さんが先程搬送されてきまして…》
最後まで話を聞かずに、タクシーを捕まえてた。
いつの間にか、翔と篠山も乗ってた。
「第一病院まで!急いでほしい」
タクシーの運転手は、多分割とスピード出してるつもりだろうけど、
今の俺からしたら、ゆっくりに感じた。
そんな苛立ちを抑えて、やっとのことで第一病院に着く。
「あの…中武優衣は?」
「今手術中です。医師も手を尽くしておりますので、そこにおかけになっていて下さい」
「くそっ…」
仕方なく指定の場所に座る。
こういう時に限って、大人しくしてられない。
立って、歩いて、また座って。
それを繰り返しても、時間は全然進まない。
なんで、何もしてやれなかったんだろう。
意地でも、バイト先まで迎えにいくべきだった。
なんで…
そう悔やんでも悔やみきれない思いのまま、手術が終わった。