勿忘草―ワスレナグサ―

結局、昼休みに白藤さんは見つけられず、学生証は放課後に返すことにした。


―放課後―

蓮田「・・・どこにいるんだろ?」



? 「白藤さんなら図書室よ。」


突然、うしろから声をかけられた。


蓮田「え・・・、きみは?」


? 「私は桐乃。それじゃ」


その子はそのまま歩いていってしまった。


蓮田「なんだったんだ?」



―図書室―

蓮田「あ、見つけた。」


白藤 (びくっ)


白藤さんは驚いて、また扉の方に足を向けた。


蓮田「ちょっとまって!学生証!」


学生証に反応したのか、走り出す足を止めた。


蓮田「これ、落ちてたから」


白藤「あ・・・ありがとう・・・」


小さな声でそういって、うつむきながら学生証を受け取った。


白藤「それじゃ、サヨナラ・・・。」



―サヨナラ・・・。



ドキッとした。



なぜだか分からない。



ただこのままおれはこの子と会えなくなる。



そんな気持ちになって、むねが痛くなった。




―なにか、なにか言わなきゃ


蓮田「―友達!!」


白藤「え・・・?」


蓮田「・・・友達に・・・なってくれませんか」



白藤さんはしばらくうつむいて黙っていた。

そして振り返って小さな声で、


白藤「ごめんなさい・・・。」


そういって図書室から出ていってしまった。


蓮田「なんでそんなに悲しい顔してんだよ・・・。」





振り返った白藤さんの目には涙が浮かんでいた。

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