甘めな毒



「興味が、あるの?」
「……別に、知らなくても生きていけるし」
「そっか」
「あんたもさっさとあんな奴のこと忘れれば。そしたら今よりずっと楽になれるんじゃない」
「………」


 そうできたら、苦労してないんだけど。そうは思ったけど、口には出さないでおいた。


「そういや、姉ちゃんが言ってたわ」
「何を?」
「このゲームすればリアルの男なんて皆クソ以下に見えるからおすすめだって」
「クソ以下……」


 姉弟揃って毒舌なんだろうか……。なんて思っている間に梶くんはお姉さんに無理やり渡されたというゲームを鞄から取り出した。
 そのパッケージには五人ほどのカッコイイ男達が並んだ絵と『紅華(あかばな)(ちぎ)り』という何とも古風なタイトルが添えられている。これが所謂、乙女ゲームというやつだろう。
 存在を認識してはいたが、いざ急に目の前に出されると受け取るのを躊躇ってしまう。


「えっと……」
「まあ、気が向いたらやればいいと思う」
「……どうも」


 何だか複雑な気分のままゲームソフトを受け取った。


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