甘めな毒






「お前、最近昼休みどこ行ってんの?」
「えっ」



 放課後、部活にいく準備を進めながら中島が投げかけてきた質問に思わず固まる。


「昼飯誘おうと思ったらいつもいねーし」
「ああ、えっと……屋上かな」
「屋上?何で?」
「一人で食べるの楽なんだよね。ほら、教室だと一人でいると浮いちゃうじゃない?」
「ふーん、そういうもんか?」
「そういうもんそういうもん」


 梶くんと食べてるとは口が裂けても言えない。中島には勘違いされたくない。


「あ、そうだ。来週のテスト用にノート見せてくんね?」
「え~?何で私の?」
「だって俺の周りで勉強できるの沢田だけだし」
「いやいるじゃん、いつも成績上位が常連のバスケ部マネの佐藤(さとう)さん」
「佐藤はダメ」
「何で私は良くて佐藤さんがダメなわけ?」


 呆れながら聞くと、中島は途端にそわそわし始めた。視線をあちこちに向けて必死に言葉を繋げている時は、嘘をついている証拠だ。


「賢いやつに教えて貰うと、緊張するし……」
「緊張、ねえ……」
「ほ、本当だかんな!」
「……緊張って、別の意味だったりして」
「は、は!?んなわけねーだろばか!もういい、部活行く!じゃーな!」


 ガタガタと終始動揺しまくった状態で中島は教室を出て行ってしまった。


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