甘めな毒
「何あれ、図星かよ……」
中島が私を好きじゃないことは分かっていたけれど、更にとどめを刺された感じだ。
「中島のばか……」
何で、私じゃないのか。どうして、佐藤さんなのか。佐藤さんと私では何が違うのか。
私の方がずっと中島のことが好きだったし、私の方が中島とは仲も良い。付き合いも長いから色んなことに理解もある。
それでも、中島にとって私は特別な存在にはなれない。
「何でよ……」
こんな思いをするくらいなら、全部忘れてしまえたらいいのに。あんな奴を好きな自分も、ふられたくせにみっともなくすがりつく自分も、ばかみたいに一人で泣くしかない自分も。
どうしてこんな思いをしても私の心は中島のことでいっぱいなんだろう。どんなに思っても中島は私じゃない誰かを見るし、告白したってそれは何も変わらなかった。
心臓の奥が苦しくて、目を閉じると浮かぶ中島の姿が切なくて。しょっぱい涙が頬を伝っていく。
「……っ」
カタンッ。物音がして、弾かれるように顔を上げた。
入口の前にはいつかのように梶くんが立っていた。私を見て目を丸くしている姿も前と一緒。