甘めな毒
「話聞いてる?」
「き、聞いてますっ」
全力で嘘をついてしまった。けれどまさか本当のことなんて言えるわけもない。
「もうちょっと、右、右押して」
「はいい!」
ワケがわからないままとにかく右のボタンを連打する。すると気づけばゲーム機からはいつもの賑やかな音楽が流れていた。
「クリアできた」
「お、おお……すごい」
「何それ、反応薄」
「いや、だって……」
梶くんが近くて、何か石鹸みたいないい香りがしたし、そんでもって梶くんの手が思ってたより大きくて、ゲームどころじゃなかった。破壊力がすごすぎる。さすが高難易度男子。
「ていうかあの……そろそろ離れない?」
「あっ」
梶くんはこの状況にたった今気がついた様子だ。慌てて私から離れるとばつが悪そうに視線を逸らされてしまった。