甘めな毒
「んーそれ多分持ってると思う、今度持ってきてやるよ」
「ほんとに?ありがと!」
「俺もそれ前にやってたけど、結構難しいんだよな」
「そうなんだよね~特にあのタコみたいな敵!」
「あ、分かる。あれは俺も苦労した」
「だよね~、装備とかちゃんと買わないと普通にボコボコだし、だからって安物で済ませてもあっさりと壊れちゃって全クリできないしで結構鬼畜なんだよね」
「そうそう、かなりしんどい」
「まあ梶くんはキッチリした装備持ってたからかなり楽だったけどね」
「梶くん?って、え、どういうこと?」
「あっ」
つい口が滑ってしまった。自分でも予想外の現状に身体も思考もフリーズしかけた時、入り口から梶くんが入ってきた。
「……梶くん」
「噂をすればってやつ?」
「……ちょっと、こっちきて」
梶くんは少しだけ不機嫌な表情で私の腕を掴むと中島には目もくれず教室から出た。
私の腕を引っ張ったまま、長い階段をのぼっていく。抵抗も許されないままに引きずられるようにして梶くんの後ろをついて歩いた。
やがて長い階段をのぼりきった梶くんは勢いそのままに屋上の扉を開け放って、ようやくくるりと此方を振り返った。