甘めな毒



「か、梶くん……?」
「………」


 梶くんが睨みつけるように私を見る。ぎゅっと、未だ握られたままの右手が痛い。


「むかつく」
「え?」
「あんた見てると、むかつく」
「……っ」


 昼休みにも確かそんなことを言われた気がする。私が気がついていなかっただけで、実はずっと梶くんに嫌われていたのかもしれない。そう思ったら涙が出そうになって懸命に堪えた。


「あんた見てると、ざわざわしてモヤモヤして気持ち悪くてイライラする。分けわからんこんなの、何とかしろっ」
「な、何とかって……言われても」
「あんたのせいなんだ。あんたが泣いてんの見ると、何ていうかその……優しく、してやりたくなる」
「……え?」


 想定外のセリフに間抜けな声が漏れた。


「でも、それと一緒にイライラも募って、何か全部めちゃくちゃにしたくなって……」


 いつも涼しげな表情をしている梶くんが、今はどこか余裕のない表情をしている。
 私は今、目の前にいる梶くんの姿を受け止めるのに精一杯だった。頭の中が混乱しすぎてうまい言葉が見つからない。


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