甘めな毒



 シャワシャワシャワ。生温い風と共に蝉の鳴き声が通り抜けていく。

 梶くんは、あの日のことをどう思っているんだろう。ふと、そんなことを思った。

 一週間前、その日も今日のような晴天だった。
 空っぽの教室で、いつも気を張ってばかりいたせいかほんの少しだけ一人でいることにホッとしてしまった。けれどそれがいけなかったんだと今は思う。

 学校が嫌いなわけじゃない、友だちもいる。それに、中島もいる。
 どうせバスケ馬鹿のあいつは今日も人一倍長くあの体育館に残るのだろう。
 中学生の時からずっと、何も変わらない。いつだってバスケバスケ、それ以外のことに興味もないし高校に入れたのだって奇跡だ。


「バスケ馬鹿……ほんと、ばか……」


 私が中島を好きだと自覚したのはもう随分と前のこと。我ながら全く望みのない恋をしていることに自分自身の方がよっぽど馬鹿だと自覚している。
 けれど、どうしたって抗えない。どうしたって、中島のいる方を見てしまう。中島の視線の先に映るものを追いかけてしまう。
 それはとても苦しいのに、もう抜けなくなった癖のようで。いつだって中島のことを考てしまう。


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