甘めな毒
羞恥に苛まれる私を弄ぶようにスルリと下目蓋に触れていた指先が今度は私の頬に流れていく。
ぴくっと肩を揺らす私に梶くんはさっきよりもちょっとだけ真剣な瞳をしていた。
「………」
「………」
流れる沈黙に落ち着きかけた心臓がまた動き出す。
「ゲーム、面白い?」
「え?」
「ゲームの男がそんなにイイのかって聞いてんの」
「……まあ」
梶くんだと思って想像したら、もっと胸がキュッとして、ドキドキしてハラハラして、苦しくなったり切なくなったり、梶くんだと思うだけで色んな感情が湧いてくる。
「……気に入らない」
「……梶く」
名前を言い終わるよりも先に、梶くんの熱っぽい唇によって塞がれてしまった。
その瞬間、色々考えていた余計なことが全部吹き飛んで目の前の梶くんだけでいっぱいになった。柔らかい感触と石鹸の香りだけが心を満たしていくようだ。
たった数十秒のできごとが永遠にも感じられるくらい、長かった。唇が離れて梶くんを見ると、その耳はやっぱり真っ赤になっていた。
「照れるくらいなら、しなきゃいいのに」
「うっさい。……俺が、あんたとキスしたかったんだよ」
そう言って私を真っ直ぐに見てくるから、ますます愛しさが募っていく。
「ね、梶くん」
「………」
「もう一回、して?」
私の小さなワガママにも梶くんは顔を真っ赤にしながら、懸命に答えてくれようとする。
「梶くん、大好き」
「……うん」
fin.