甘めな毒
「………っ」
今度は別の意味で喉の奥が固くなり、目頭がじわじわと熱くなった。
気づいたら梶くんを見ていたはずの視界はぐにゃりと歪んで、やがて大粒の涙が私の頬を伝っていった。
自分でもどうして泣いてるのかよくわからない。ただ涙は止まることなく溢れ続ける。
私は中島が好き。それは自分でもずっと分かっていたはずのことだった。
けれど、自分の中にずっと閉じ込めていた色んな感情を他人の口から聞くと、それは途端に現実みを帯びて重くなった。
「……何で、泣いてんの」
梶くんのちょっとだけ慌てたような震えた声がした。
みっともない姿を晒してしまった私は慌てて涙を拭ったけれど、無意識のうちに溢れた涙はなかなか収まってはくれなかった。
「わけ分かんない……これ、俺が悪いの?」
「………」
どうしても声が出せなくて、私は懸命に首を横に振った。
「なら泣き止んでよ、俺が泣かせたみたいじゃん……」
少しだけばつが悪そうに梶くんが私の方にやってきた。
こういう時、小説や漫画では男の子が優しくハンカチを差し出してくれて、それからヒロインは頭を優しく撫でてもらったりするもんなんだろうけれど、生憎私の知っている梶くんはそんな王子様キャラからは程遠い。