最後の瞬間まで、きみと笑っていたいから。
こんな彼を見ていると、あの日の夜の、桜の下で倒れていた多賀宮くんは、私の夢だったような気がしてくる。
そして4回目も乗るかって顔したから、私は勘弁してくださいって言おうとしたんだけど――。
「……っ」
突然、列に並びかけた多賀宮くんが、手のひらで口元を覆って立ち止まったんだ。
「どうしたの?」
背の高い彼を下から見上げる。
「ん……」
薄暗闇の中でもわかる。明らかに多賀宮くんの顔は、青いのを通り越して、真っ白になっていた。
じんわりと汗をかき、明らかに呼吸が乱れている。
「多賀宮くん、もしかして酔った?」
そりゃ、あんだけグルングルンすれば酔ってもおかしくないよ。
「そこベンチに座ろう。冷たいお水買ってくるから、待ってて」
私は慌てて多賀宮くんの背中を支えてベンチまで歩くと、その足で急いで売店へと走った。
自販機で水を買って戻ってくると、ベンチでぽつんとうつむく多賀宮くんの姿が目に飛び込んでくる。