最後の瞬間まで、きみと笑っていたいから。

その瞬間、どうしてだろう。

なんだかすごく遠いところに、多賀宮くんがいるような気がして。


近寄りがたくなって、足が止まってしまった。


そしてしばらくそうやって、外灯で照らされる多賀宮くんをじっと見ていて、思い出したんだ。


あの、多賀宮くんを助けた夜のことを。


あの夜も彼は、あんなふうに明かりの下に照らされて、暴力的な雨で死に掛けていたんだって。


だから目の前の多賀宮くんが、あの日の彼と重なって、怖くなったんだ。


「っ……」


私は唇をかみ締めた。


冗談じゃない……。

多賀宮くんはもうあの時の多賀宮くんじゃない。

今、彼は私の目の前で生きてるし、ジェットコースターで酔ってるだけだ。

そう、なんともない。なんともないよね?


「多賀宮くん!」


おなかに力を入れて、彼の名前を呼ぶ。
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