最後の瞬間まで、きみと笑っていたいから。
<絶対零度の流れ星>
夏服への衣替えが始まる数日前の教室は、通学するだけでひと仕事終えた、というような疲れた顔をする生徒であふれかえっている。
私は早めに来て、その日の予習をするから、ホームルームが始まる直前のこの時間にはたいてい汗が引いているんだけど、ギリギリに来る男子なんかは、死にそうな顔をしているから大変そうだ。
「あっちぃ! 早く学ラン脱ぎてぇよな。つか、早くクーラー入れてくれたらいいのに」
朝から声が大きい、彼の名前はタケル。
教室に入ると同時に、急いで重たそうな学ランを脱ぎ、椅子にかける。
シャツの腕をまくり、首もとのボタンをふたつ外す。
日に焼けた小麦色の肌は健康そのものだ。
彼の席は、窓際最後尾の私の前。
パタパタとノートで顔を仰ぎながら、腰を下ろし、上半身をひねるようにして後ろの席の私を振り返って、ニッと笑った。
「はよっす」
「おはよう、タケル」
「アミカはいつから夏服?」
「んー……。一応用意はしてるけど、また雨が降るとか言ってるから、悩んでる」