最後の瞬間まで、きみと笑っていたいから。

「アミカ、手、拭いたほうがいいよ」


カナが通学バッグから手拭きのシートを差し出してくる。


「俺はバイキンかよ?」

「暑苦しいのが移るでしょ」

「なんだとー!」

「まぁまぁ……」


いつものようにふたりをなだめていると、ガラリとドアを開けて担任の先生が姿を現した。


騒いでいた教室はすぐ静かになり、生徒たちは前を向く。


「きりーつ、れーい、ちゃくせーき」


クラス委員長であるタケルが、号令をかけおえると、お地蔵様によく似た風貌の花山(はなやま)先生が、眼鏡を押し上げながら教室内をぐるっと見回した。


「皆さん、おはようございます。今日は転校生を紹介しますよ」

「ええー!」

「マジで!」


教室が一気にどよめいた。

それもそうだろう。5月末に転校生が来るなんて、聞いたことがない。


「女の子かな!」


明るいタケルの言葉に教室内どっと笑いに包まれる。そして入り口に向かって手招きした。


「多賀宮(たがみや)くん、入りなさい」

「はい」
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