最後の瞬間まで、きみと笑っていたいから。
これは先生じゃなくて、おじいちゃんとしてのお礼なんだ。
私はおじいちゃん子だから、頭をさげる先生を見て、涙が出そうになった。
あの夜、桜に溺れかけていた多賀宮くん。
本気かどうかはわからないけれど、死ぬ気だったという、多賀宮くん。
私が助けたこと、多賀宮くんは迷惑そうだった。
彼はまだ死ぬ気なんだろうか。
そのことを考えると、背筋がゾッとした。
なんとなく流されて、消えたいと思った私よりも、ずっと闇が深い気がした。
「よかったら、気にしてやってください」
「……はい」
祖父の顔になる先生に、嫌だとはいえず、うなずいてしまっていた。