最後の瞬間まで、きみと笑っていたいから。

でもお礼って、どうしたらいいんだろう……。


水曜日の夜にお礼を考えておけと言われてから、金曜日の今日まで、私なりに一生懸命考えてみたけれど、なにひとついい考えは思い浮かばない。


「じーさんが、お前に、何かお礼をしろって」


多賀宮くんはそう言った。


そういえば多賀宮くんのこと、花山先生からよろしく頼まれてたんだっけ……。


正直、言われたことをすっかり忘れていた。


だって、水曜日に会ってバイバイして、木曜日と金曜日は、少し寂しくて。土曜日くらいから来週会えるなって考えて、月曜日になったら明後日だ!って、嬉しくなって。

火曜の夜からはずっと、水曜日のことを考えている。


授業中だって、集中しなきゃって思うのに、気がついたら多賀宮くんのことを考えている。要するにほぼ毎日、多賀宮くんのことをかんがえているんだ。


そんな私がお礼をもらうなんて変じゃない?


「……ミ、カ、アミカ!」


ポンと肩を叩かれて「ひゃっ!」と悲鳴を上げた。

振り返ると、教科書を胸に抱えたカナが不思議そうに私を見下ろしている。


「なにボーッとしてんの? 次、移動教室だよ。行こ」

「あ、そっか、ごめん……」


慌てて教科書を机から取り出し、立ち上がった。


多賀宮くん、まだ戻ってきてない……。


彼は昼休みにふらっと出て行ってまだ戻ってきていない。荷物はあるから帰ってはいないはず。

今日は朝から来ていたのに、どうしたんだろう……。


後ろ髪引かれながらも、視聴覚室に向かった。
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