最後の瞬間まで、きみと笑っていたいから。
カタリ、と音がした。
隣に誰か座ったんだ。
目をこらすと、それは多賀宮くんで。
「あ……」
思わず声を漏らした私に、彼は自分の唇の前に人差し指を当て、それから頬杖をつき、スクリーンを眺める。
それから、映画はいいところで止められてしまった。残りは次週らしい。
明かりがついて、視聴覚室がザワザワしても、多賀宮くんはじっとスクリーンを眺めていた。
「続きが気になるね」
「そうか? もう結末はわかりきってるだろ」
わかりきっているという割には、とても真剣に見ていたみたいだ。泣いたみたいに、白目が少し、充血して赤い。そんなわけないけど。
「わからないでしょ。彼女とうまくいって幸せになるかも」
映画の中で、パガニーニは興行主のお嬢さんと恋に落ちていた。
お嬢さんはとてもピュアできれいで、魅力的なので、パガニーニは一気に参ってしまったのだ。
「んなわけねぇだろ。あいつはろくな死に方をしないね」
かわいそうな176年前に死んだパガニーニ。
今、極東の国の男子高校生にろくな死に方をしないと言われるなんて、夢にも思ってないだろうな。
そして多賀宮くんは、体の前で腕を組んだまま問いかける。
「で、考えたか?」